TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 緒車寿一
■本気でパワーをもらえる最高のフェス
グループ魂のライブイベント『三宅ロックフェスティバルvol.4』が9月5日、東京・新宿LOFTで開催された。
2018年1月に初めて開催され、今回で4度目となる『三宅ロックフェスティバル』。今年8月31日にライブBlu-ray BOX『グループ魂 一年ぶりの再結成!中野サンプラザ』がリリースされたことを記念して行われる今回のイベントには、グループ魂のほか、第1回にも出演した怒髪天が出演。石鹸(Dr/三宅弘城)が尊敬してやまない怒髪天との対バンが再び実現し、会場は終始、熱気と爆笑(もちろん声出しは禁止)に包まれていた。
トップバッターは、グループ魂。いつものようにMCの港カヲル(46歳/皆川猿時)が登場し、「女は三宅弘城のようなものである。なぜなら、座って〇〇〇〇をするから」という口上で失笑を呼び、さらに「こんばんは。夜のウーマナイザー、港カヲルです」と元気よく挨拶。「三宅ロックフェス、まさかの第4弾。そして、まさかの第1弾とほぼ同じメンツ。どうだ、想像の斜め下をいくだろう?」「しかも今夜はグループ魂がトップバッターでございます。理由は三宅が怒髪天のライブを心おきなく堪能したいから!」と話すと、フロアからは大きな拍手…ではなく、“魂”スリッパを叩く音が響く。本当に温かくて優しいお客さんである。
「お、出てきた!仲良しおじさん!」(港)とメンバーが登場。ドラムの位置には怒髪天のドラマー・坂詰克彦が座り、石鹸(Dr/三宅弘城)がボーカルを取る「男は泣く」からライブはスタートした。ライダースジャケットで決めた石鹸が“俺が泣いたら 笑え!”と気持ちよく熱唱していると、破壊(Vo/阿部サダヲ)、ATSUSHI(ニューロティカ)、よーかいくん(LTD EXHAUST、199X=3、画鋲)、怒髪天のメンバー、もステージに現れ、いきなり賑やかな雰囲気に。「アンコールか!おじさん帰れよ!!」と叫ぶ港カヲルはもちろん既に汗だくだ。
■バンドのテンションは最高潮
「はい、どうもこんばんは!!」(破壊)のシャウトから始まった「モテる努力をしないでモテたい節」、さらに高速のパンクチューン「ずるむケーションブレイクダウン」で、“ずるむけ”を連発し、観客のスリッパを鳴らす音もさらにアップ。グループ魂のライブは2022年1月21日に東京・中野サンプラザで行われた“再結成ライブ”以来だが、バンドのテンションは最高潮だ。
MCでは、ライブのたびに感極まって涙を流す石鹸をメンバーがイジる。
破壊「どう?石鹸。どこで泣けた?」
石鹸「いやいや、泣けるところないでしょ!」
暴動(ギター/宮藤官九郎)「泣くとこ、セットリストに自分で書いてるから。“ドパン!シャンシャン!泣く!”って(笑)」
という微笑ましいやり取りの後は、破壊・暴動・バイト君(大道具/村杉蝉之介)のコント(めちゃくちゃ面白かったのですが、時事ネタがヤバすぎて内容は一切書けません!)。「僕も女の子をアテントしてほしいな」(バイト君)、「アテントは紙おむつじゃ!」(破壊)というオチから「Over 30 do The 魂」がさく裂。さらに「豚増し!脂ましまし!(大!)」というシャウトから始まり、港カヲルが脂ギトギト系ラーメンへの愛を叫びまくる「ラーメン二郎」。港が死んだふりをし、「会場にお医者さんはいませんか!?」(破壊)という呼びかけから「白衣 下ネタ ホワイトボード」で始まる「ケーシー高峰」。そして、お祭り的ビートとともに“死ぬまで生きろ!”というメッセージを響かせる「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」とアッパーチューンを連発した。50代のメンバーたちはときどきキツそうな顔をしながらも、演奏のカッコ良さはまったく衰えず。この日のゲスト・怒髪天の増子直純(Vo)がMCで「歌詞は面白いんだけど、とにかく曲がカッコいいんだよね」と言っていたが、まさにその通り。グループ魂のロックバンドとしてのカッコよさは、ライブハウスでこそ活きるのだと思う。
■ロックシンガーとしての凄みが真っ直ぐに伝わってきた
そして、個人的にもっともグッとき来たのは「モテる努力をしないとモテないゾーン」。音源では銀杏BOYZの峯田和伸が参加しているが、この日は破壊と港カヲルのツイン・ボーカル。特に超アグレッシブな破壊のパフォーマンスからは、ロックシンガーとしての凄みが真っ直ぐに伝わってきた。
その後もコミカル&パンクな楽曲を次々と披露。「この曲をやってるときに泣いた人が勝ちっていうのはどう?」(暴動)と提案された「痛風だけど恋愛したい」(結果は誰も泣かず)、前のめりなビートと“入っちゃった、入っちゃった”と連呼する歌が楽しい「IN」からライブは後半戦へ突入。“俺、いつまでパンクやるんだろう?”をテーマにした「I was PUNK!! ~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE’KA)は?~」では、“あっちゃん”(ATSUSHI/ニューロティカ)が“俺たちいつでもロックばか!”とシャウトしながら登場!さらにニューロティカの「ア・イ・キ・タ」をセッションし、会場の熱狂をグッと引き上げた。
■“これぞパンクコントバンドの真骨頂!”
そして下ネタ濃度高めの「押忍!てまん部」。観客との“魂スリッパ”を使ってコール&レスポンスも最高に楽しい。破壊、暴動の若き日の思い出を投影した「高田文夫」でホロッとさせられた後、ラストの「グループ魂のテーマ」へ。最後の最後まで演奏のテンションは落ちることなく、“これぞパンクコントバンドの真骨頂!”なステージを見せつけた。
続く怒髪天のステージは、“ならば 心はノーカット”“モロで いこうじゃないか”と熱く叫ぶ「裸武士」から。“ロックバンドが理想や/夢歌わずにどうする”という歌詞がグッと突き刺さった「HONKAI」、ロックバンドのダサカッコよさをド直球で表現した「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」と男気あふれる楽曲でオーディエンスを惹きつける。
「今日は石鹸のためのフェスだから。まずやってほしい曲を聞くところから。今日は俺たちが考えたセットリストじゃなくて、石鹸の車に乗ってる感じだと思ってほしい(笑)。すべては石鹸のために!」(増子)というMC通り、この日の怒髪天は石鹸が好きな楽曲を次々と披露。“オトナになっても冒険は続く!”と歌い上げる「プレイヤーI」から始まり、“歩みを止めなければ、夢は消えない”という思いを刻んだ「歩きつづけるかぎり」、“ガキの頃の 俺がみても ガッカリしないように 生きているか?”と自らに問いかける「ひともしごろ」。がむしゃらに生きることのすばらしさを歌い上げる「クソったれのテーマ」、孤独を抱えながら日々を送るすべての人の背中を押す「孤独のエール」、叙情的な旋律とともに、戦友達への思いを綴った「つきあかり」──。
死生観、人生観をダイレクトに刻み込んだ楽曲は“エモい”なんていう言葉を遥かに越え、心と体を強く揺さぶってくる。増子の強烈にして濃密なボーカルを支え、増幅させる上原子友康(Gu)、清水泰次(Ba)、坂詰の演奏も最高。増子も「…死んじゃうよ。おっぱいも元気じゃねえよ。リクエスト厳しいよ」と愚痴りつつも、「自分の好きなバンドのイベントに呼ばれるのがいちばんの幸せだからね」とどこか楽しそうだ。
■“オトナはサイコー!青春続行!人生を背負って大ハシャギ”
「ここからは楽しいコーナーだから!景気いいやつを!」(増子)という煽りからイベントはクライマックスへ。まずは「酒燃料爆進曲」。超アッパーなサウンドとともに「三宅のフェスに乾杯!」と叫び、オーディエンスも手を挙げて応える。「それではみなさん、ステージのほうへ!」と増子が呼び込み、グループ魂のメンバー、あっちゃん、よーかいくんが登場。人気曲「オトナノススメ」のメインボーカルはもちろん石鹸。笑顔で楽しく歌っていたのだが、だんだんと感極まり、最後は大号泣。(あまりの泣きっぷりに破壊がスリッパで頭をハタいてました)男泣きの石鹸、それを見て笑っている仲間たちの姿はまさに“オトナはサイコー!青春続行!人生を背負って大ハシャギ”(「オトナノススメ」)そのものだった。
ラストは「ド真ん中節」。石鹸が客席の最前列・ど真ん中で観ている中、“何も恐れず、お前の道をドンといけ!”と鼓舞する歌を響かせ、イベントは大団円を迎えた。
OVER50の男たちが泣いて笑って盛り上がり、それを間近で見ている観客たちも泣いて笑って盛り上がる。本気でパワーをもらえる最高のフェスだった。そして、次のグループ魂のライブを心待ちにしたい(いつになるんだろう、いったい?)。
三宅ロックフェスティバルvol.4
9月5日(月) 新宿LOFT
■グループ魂
1.男は泣く
2.モテる努力をしないでモテたい節
3.ずるむケーションブレイクダウン
4.Over 30 do The 魂
5.ラーメン二郎
6.ケーシー高峰
7.それでも生きなきゃ死んじゃう音頭
8.モテる努力をしないとモテないゾーン
9.痛風だけど恋愛したい
10.IN
11.I was PUNK!! ~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE’KA)は?~
12.ア・イ・キ・タ
13.押忍!てまん部
14.高田文夫
15.グループ魂のテーマ
■怒髪天
1.裸武士
2.HONKAI
3.ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
4.プレイヤーI
5.歩きつづけるかぎり
6.ひともしごろ
7.クソったれのテーマ
8.孤独のエール
9.つきあかり
10.酒燃料爆進曲
11.オトナノススメ
12.ド真ん中節
Spotify のMusic+Talkにて、「一年ぶりの再結成! -Live at 中野サンプラザ-」から
配信中のライブ音源5曲とともに、暴動、港カヲルによるトークをお届けします。
https://open.spotify.com/show/4o6xDWnCGH0nYOUTQcb9GJ
グループ魂 OFFICIAL SITE
https://www.g-tamashii.com
怒髪天 OFFICIAL SITE
http://dohatsuten.jp/