TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 大橋祐希
■アーティストとリスナーが出会う最良の場所
完全招待制によるライブイベント『Invitation to TRIAL GATE Vol.2』が開催。第一回目は渋谷TOKIO TOKYOで行われたが、二回目は場所を移して、代官山UNITにて行われた。前回に続き、今回もライブ・シーンを賑わすであろう、才能豊かなアーティストたちが一堂に集結した。
今日のオープニング・アクトを務めたのはCarlo Redl(カーロ・レドル)。彼はBE:FIRSTのデビュー曲「Gifted.」の作曲家でもあり、日英バイリンガルのシンガーソングライター兼ギタリストとして活躍している。まずアコギ片手に彼が現れると、ジョン・メイヤーの「Neon」でスタート。アコギの繊細な質感とは対極に、パーカッシヴな演奏を叩きつける。そこに甘い歌声を乗せるギャップの激しさが良かった。「日本で初めてのライブ…今、死ぬほど緊張しています。日本語、難しいですね(笑)」と軽く挨拶。残り2曲はエレキ・ギターに持ち替え、特に「Luv」ではR&B調の洗練された歌声を放ち、後半は哀愁に満ちた長尺のギターソロまで披露。ブルースに精通した音楽的な懐の深さも、彼の持ち味と言えるだろう。
次は『TRIAL GATE Vol.1』にも出演していたざきのすけ。が登場。アッパーなトラックに乗せ、身振り手振りのアクションにより、爽やかな歌声を存分にアピール。2曲目以降は前回のライブで初共演し、制作も手伝うSANABAGUN.の大桶裕大(Key)に加え、Omoinotakeの冨田洋之進 / ドラゲ(Dr)も参加し、初の3人体制で挑む。これが吉と出た形で、豊かな声量はさらにパワフルに、伸びやかに響き渡っていた。やはり鍵盤と生ドラムの存在は、歌い手としても気分が乗るに違いない。楽曲的にはR&B、ヒップホップ、ソウル、ジャズから、シアトリアルな雰囲気のものまで、多彩な声色を使い分けて観客を引き付けていく。また、時にシャウトする場面もあったりと、バンド編成のアーティストと比べても遜色のない熱量の高さ。中盤過ぎにメンバー紹介を挟むと、「前半は激しい曲をやったんで…」とMCで告げ、後半はより繊細なアプローチの中に太い芯を感じさせる奥深い歌声を発揮。特に「Feel Like」ではコブシを効かせるなど、ダイナミックな歌唱ぶりも光っていた。札幌発の21歳とは思えない堂々たるパフォーマンスであった。
「東京で初のライブに来てくれて、ありがとうございます。日本語、英語、そして、私のルーツである中国語の曲もあります」と、序盤に自己紹介する彼女。そう、日本と中国のハーフであるkrage(クラゲ)は、デビュー曲「HIBANA」がTVドラマ『寂しい丘で狩りをする』の主題歌に抜擢された注目の女性シンガーだ。その歌声は透明度が高く、木綿のように柔らかなニュアンスで迫ってくる。そんな彼女が「ここで1曲カバーをやらせてください」と前置きし、自身のYouTubeにアップし150万回再生超えを記録している「unravel」(by TK from 凛として時雨)をドロップ。この曲のみ椅子に腰掛け、鍵盤による弾き語り形式で届けてくれた。高いキーを難なく乗りこなし、緊迫感に満ちた歌の説得力には鳥肌を覚えるほど。「東京で初めてのライブは、私にとってのスタート地点」と言い残し、最後はデビュー曲「HIBANA」で締め括る。作詞は蒼山幸子(ex.ねごと)が手掛けており、「強さになる悲しみを信じるだけ」という歌詞にも顕著だが、未来へと一歩ずつ突き進んでいく意志の強さを表明した楽曲だ。ここでの彼女は一語一句に感情を注ぎ、ロングトーンを含めてスケールの大きな歌へと見事に昇華していた。
そして、今日のトリを飾ったのはAnonymouz(アノニムーズ)。彼女は、RADWIMPSの野田洋次郎を筆頭に多くのアーティストたちから賞賛ツイートを集めるシンガーである。鍵盤奏者を引き連れ、彼女が現れると、両目の部分を花飾りで覆う独特なルックスで登場。Anonymouz=“名前のない女の子”という意味があるらしく、謎のベールに包まれたアーティストと言えるかもしれない。しかし、彼女が歌い出すと、会場がパッと明るくなる華やかさを持っている。また、軽やかに踊りながら妖艶なメロディを歌い上げたりと、耳目を釘付けにするパフォーマンスを提示。ライブ中のMCで「皆さんの記憶に残るライブをしたいと思います」と言っていたが、その言葉に嘘偽りはなかった。音楽的にはポップスを中心に、バラードも折り込み、振れ幅の大きな曲調を柔軟に歌いこなす。特に「カタシグレ」では儚くも切ない心情を丁寧に掬い取った繊細な歌声に魅了された。そして、ラスト曲「Snake Love」に入ると、彼女は右手を激しく振り、観客もそれに追随する形で会場を一つに束ねていた。謎めいた容姿をいい意味で裏切る華やかな歌声とステージングは、とても魅力的であった。
今回は「日本で初めてのライブ」、「東京で初のライブ」など初々しいコメントが飛び出し、未来を担うアーティストたちの成長や貴重な「第一歩」にも立ち会うことができた。その意味でも有意義なイベントであり、アーティストとリスナーが出会う最良の場所と言えるものになっている。Vol.3、Vol.4と、引き続き期待したい!
『TRIAL GATE』Vol.2
セットリスト 8月10日 代官山UNIT
■Carlo Redl
1.Neon (John Mayer Cover)
2.Talkin’
3.Luv
■ざきのすけ。
1.The gifted…?
2.Finger Magic
3.Launch
4.Bipolar
5.Best Part
6.Feel Like
7.MINT
8.CASSIS
■krage
1.vanity
2.LOST
3.FIX
4.ATTACHMENT
5.Unravel (TK from 凛として時雨Cover)
6.HIBANA
■Anonymouz
1.Don’t Need the Pain
2.No NAME
3.Eyes
4.東京フラッシュ
5.カタシグレ
6.Snake Love
Carlo Redl OFFICIAL SITE
https://mnnf.tokyo/artists/Carlo%20Redl
ざきのすけ。OFFICIAL SITE
https://twitter.com/zakinosuke0416
krage OFFICIAL SITE
https://www.krage-music.com/
Anonymouz OFFICIAL SITE
https://anonymouz.jp/