■「(真っ赤に染まった客席を見回して)なんだか、大きなチゲ鍋の中で歌ってるようで(笑)。真ん中で歌ってる私もカズレーザーみたいですけど(笑)」
藤井フミヤが7月11日に日本武道館で『FUMIYA FUJII 60th BIRTHDAY RED PARTY』を開催。ソロのヒット曲からチェッカーズ時代のナンバーまで、2時間30分にわたって全24曲を歌い、集まった1万4,000人の観客を酔わせた。
この日は藤井フミヤの60回目のバースデー。オーディエンスも思い思いの“赤”に身を包み、武道館の客席は360度四方、鮮やかな赤に染められた。
「煙が目にしみる」「恋はくせもの」といったオールディーズナンバーのBGMが流れるなか、真っ赤に彩られた客席は、大きなクラッピングでフミヤの登場を今か今かと待ちわびる。17時06分、客電が落とされると場内は赤いサイリウムライトで埋め尽くされ幻想的な光景に。アリーナ中央に日本武道館の形状に合わせて作られたオクタゴン(八角形)ステージの真ん中に、真っ赤なシャツに真っ赤なスーツをまとった赤尽くめの藤井フミヤが登場。ダンスチューンにアレンジされた「TRUE LOVE」で『RED PARTY』は幕を開けた。いきなりの大ヒット曲披露にオーディエンスは早くもエキサイト。「SWEET GARDEN」ではサビの“Happy Birthday”に合わせ、全員がマスクの下からバースデーメッセージ送る。
「ようこそ武道館に! 皆さん、ご存知かと思いますが、60歳、還暦になりました!」と客席に向かって挨拶し、真っ赤に染まった客席を見回して「なんだか、大きなチゲ鍋の中で歌ってるようで(笑)。真ん中で歌ってる私もカズレーザーみたいですけど(笑)」と話して場内の笑いを誘う。ここからは「老体に鞭打って頑張ろうと思います!」とアップチューンナンバー3曲を続けて歌うと、オールスタンディングでヒートアップした会場を気遣うように「スロウナンバーを歌います。どうぞお座りになって聴いてください」と着席を促す。5月にリリースした新曲「水色と空色」、ピアノをバックに朗々歌い上げる「Another Orion」、「DO NOT」ではフミヤの美しいファルセットボイスを広い会場に響き渡せる。
続いてオクタゴンステージには青いチェック柄のスーツを着た藤井尚之が登場。チェッカーズのアルバム『BLUE MOON STONE』(1992)に収められたインスト・ナンバー「FINAL LAP」でサックスソロをたっぷり聴かせる。さらに尚之のサックスからお馴染みのイントロが吹かれる。チェッカーズのデビュー曲「ギザギザハートの子守唄」だ。客席が興奮に包まれるなか、チェッカーズの衣装を彷彿とさせる赤いチェック柄のスーツに着替えたフミヤがあらわれる。続いてもチェッカーズナンバーの「ジュリアに傷心」。「中学1年のときに貯金はたいてギターを買って、17歳のときチェッカーズを結成。翌年、尚之が入ってきました」とバンドを結成した頃を思い出し、しみじみと「あんなスーパーアイドルになるとは思ってもいませんでした」と当時を振り返る。「次の曲は、いちばんスーパーアイドルの頂点になった頃の曲です!」と「あの娘とスキャンダル」になだれ込む。観客も声こそ出せないが、大きな手拍子でフミヤのパフォーマンスに応える。「星屑のステージ」「夜明けのブレス」と怒涛のチェッカーズ曲6連打に、客席も大喜びで、興奮の坩堝に叩き込まれる。
「とうとう俺の誕生日にも、マスク外せなかったなぁ。でも、今日は(ライブを)できて良かった。誕生日って今日しかないからね」と、この日をファンと共に過ごせたことを喜ぶ。また、この日はフミヤにとって110回目の日本武道館。チェッカーズの解散コンサートもここで開かれており、1999年からは年末のカウントダウンコンサートも行われた思い出深い場所でもある。「なので武道館で盛り上がる曲やると、ついHappy New Year!って言いそうになるよ」とアップテンポの“盛り上がる”曲のコーナーに突入。本編ラストの「恋の気圧」では冒頭、キャノン砲から金色のテープが発射。終盤には大きな銀の旗を振りながら、パフォーマーがオクタゴンステージを煽りながら走り回ると、オーディエンスも両腕を激しく左右に振って応じる。最後は場内に向けて紙吹雪が発射され、ヒートアップした会場をあとに、フミヤは右腕を大きく掲げながらステージを降りた。
アンコールで再びステージに現れたフミヤは「ホントに人生ってのは、どうなるかわかりません。60歳になって武道館の真ん中で歌っているとは思わなかったですもの」と話して「では、みんなの好きな曲やります!」と2018年に行われたファン投票1位の曲「ALIVE」を激しいアクションと共にアグレッシブに歌う。「いや~老体に鞭打ったわ(笑)。古希までやれますかね?」と次の「友よ」を歌い出す。「一緒に歌おう!」と誘われ、ステージに登場したのはヒロミと木梨憲武のふたり。この曲はバラエティ番組をきっかけに生まれた3人で歌う曲だ。木梨はかつて自身も出演していた人気番組『夕やけニャンニャン』のテーマ曲「あの娘とスキャンダル」が演奏されたことに「ビックリした! でも、チェッカーズあと4曲ぐらいほしいね。歌えるでしょ」とフミヤに無茶ぶり。「ここで俺たちが出てくるの、親戚のオジさんが来るようなもんだと、みんな驚かないでしょ? なのでもうひとり、今日は呼んでます! 右京さん!!」と呼び込まれたのは水谷豊! 「どうしても今日これをフミヤに着せたくて」と、還暦といえばの“赤いちゃんちゃんこ”を渡し、フミヤは照れながら、ちゃんちゃんこを羽織る。ここへ大きなバースデーケーキが運び込まれ、みんなで「Happy Birthday」を歌ってお祝い。さらに水谷豊が3日後に古希を迎えるということがわかり、今度は水谷に向けて「Happy Birthday」を歌うWお祝いとなった。
3人のゲストを送り出したフミヤはあらためて、赤いちゃんちゃんこを見て「問題はこれ(ちゃんちゃんこ)を着て歌うのかってことだな」と恥ずかしそう。次の「紙飛行機」は曲間にファンが紙飛行機を投げ入れる人気曲。普段なら思い思いの手製の紙飛行機を持ち込まれるが、この日は感染症対策として入場時に配られた赤い紙飛行機を使用。“Paper Plane 飛ばしてみよう”を合図に、一斉に場内を飛び交う赤い紙飛行機の様は壮観。会場とステージが見事に一体化した。
このあと、フミヤから「この先も、歌えるところまではうたって行こうと思います!」と生涯現役宣言も飛び出し「まだまだ未完成の藤井フミヤです。でも完成するときは死ぬときでしょう。だったら未完成のまま死んで行きたいです」と6月にリリースした新曲「未完成タワー」を歌って締めた。「燃え尽きた…」と漏らすほど2時間30分を突っ走ったフミヤ。「明日から、あ! 今日からか、60だわ。頑張るわ。また一緒に遊ぼうぜ!」と言い残し、ゆっくりとステージを降りた。
「今日の赤い武道館は、私の人生の中の記憶に残ると思います」と話していたほど、フミヤにとっても大事な1日となった、この日のコンサート。1万4,000人のファンと過ごした60歳の誕生日は一生忘れられない思い出になったであろう。
『FUMIYA FUJII 60th BIRTHDAY RED PARTY』セットリスト
07/11(月)東京・日本武道館
01.TRUE LOVE -Re Take Ver.-
02.MY STAR
03.SWEET GARDEN
04.タイムマシーン
05.GIRIGIRI ナイト
06.I・N・G
07.わらの犬
08.水色と空色
09.Another Orion
10.DO NOT
11.FINAL LAP
12.ギザギザハートの子守唄
13.ジュリアに傷心
14.あの娘とスキャンダル
15.星屑のステージ
16.夜明けのブレス
17.WE AREミーハー
18.Stay with me.
19.UPSIDE DOWN
20.恋の気圧
ENCORE
21.ALIVE
22.友よ(ゲスト:ヒロミ、木梨憲武、水谷豊)
23.紙飛行機
24.未完成タワー
PHOTO BY 三浦賢治
藤井フミヤ OFFICIAL SITE
https://www.fumiyafujii.net/