INTERVIEW & TEXT BY 真貝 聡
■花村想太 & Lil’ Fang、10年前の出会いがすべての始まり
4オクターブのハイトーンボイスで存在感を放つDa-iCEの花村想太と、パワフルかつ圧倒的な歌声で魅了するFAKYのLil’ Fang。
ふたりは同じavex所属の先輩と後輩で、出会いは約10年前に遡る。Da-iCEが渋谷VUENOSでライブを行っていた時、まだソロアーティストだったLil’ Fangも出演者のひとりとしてそこにいた。
「Da-iCEさんはメジャーデビュー前でしたが、当時からすでにカリスマ的な存在でした。私がソロだった時はR&Bを歌い上げるスタイルで、ダンスはできなかったんですよ。初めて想太さんを観た時は“踊りながらこんなにうまく歌える人がいるのか”って衝撃を受けました」(Lil’ Fang)
■“英語ができない”すら凌駕する歌声
初共演のライブからしばらくして、花村はavexにFAKYというグループができると耳にする。そして、メンバーの中にLil’ Fangの名前を見つけてハッとした。
「“あの歌がうまい子も入ったんだ”と思いましたね。当時のFAKYはワールドワイド色が強く、英語を喋れるメンバーが多い中、Lil’は喋れなかったらしくて。“英語ができなくても入れるんだ”と驚きつつ、彼女の歌唱力はそれすらも凌駕するんだなと納得しました。
なによりFAKYは全員ビジュアルが良いし、歌もうまい。“日本でこういう実力派が認められるシーンがあると良いな”と思って見ていました」(花村想太)
■Lil’ Fangと歌うことを即答した花村想太
そんな親交の長いふたりが、今回7月から放送開始したTVアニメ『オリエント』第2クール淡路島激闘編のオープニングテーマを担当することになった。
「『オリエント』第1クールでは、Da-iCEとしてオープニングテーマ『Break out』を担当しました。第2クールのお話をいただいた時、会社の方から“Lil’ Fangさんとやるのとソロでやるのと、希望はありますか?”と聞かれたんです。もちろん僕の一存で決まるわけじゃないんですけど、“僕はLil’と歌いたいです”って即答しました」(花村)
■ボーカル泣かせ!? 常軌を逸した発想
楽曲制作がスタートしたのは去年10月。まずは花村が率いるバンド・Natural Lagの福田智樹がトラックを作り、花村がトップライン(歌メロ)を考えた。
楽曲を作るうえで、花村はLil’ Fangのボーカルをイメージしながら作曲したという。
「僕が歌うキーの3度下とか5度下に相手の歌が入るというのが、基本的な作り方なんです。だけど、それだと僕らがやる意味がない。今回は女性パートで想定していたところを自分のキーにして、その3度上をLil’に歌ってもらおうっていう、常軌を逸した発想を思いつきました」(花村)
初めてデモを聴いた時、ボーカリストとしての腕が試される楽曲にLil’ Fangはプレッシャーを感じた。
「事前に“どの高さまで歌えますか?”と聞かれたんですけど、想太さんと歌うからには自分の歌いやすいキーとか言ってる場合じゃないと思って。“なんでも大丈夫です”と言ったら、とんでもなく高いキーの曲が届いたので、焦りましたし、音楽を始めてからいちばん練習しましたね」(Lil’ Fang)
■分析できないほどレベルの高い歌唱力
Lil’ Fangは3年前にポリープの手術をして以降、声を張り続ける歌い方が怖くなっていたという。
だからこそ限界ギリギリのキーで歌うことは、彼女にとって大きな挑戦だった。そして、今回のレコーディングを通して、Lil’ Fangは花村の歌唱力に改めて驚いたという。
「その人がどうやって歌唱しているかは歌を聴けば大体わかるんですけど、想太さんは分析できない。ものすごくテクニックがあるうえに、感情を乗せて歌っている。改めて、化け物級の歌唱力だと思いました」(Lil’ Fang)
■作品への思い、2組の思いが詰まった「Break it down」
ふたりで共作した歌詞には『オリエント』だけでなく、世情に対する想いも反映されている。
「『オリエント』って表向きは鬼が神と拝められる世界で、だけど裏では鬼こそが人間の世界を支配しているという話なんです。常識とされていること、素晴らしいと言われていることが、果たして本当にそうなのか? という視点で作詞しました』(花村)
「元々作品のファンなので、歌詞を読んだ第一印象は“『オリエント』の世界観にぴったりだ!”と興奮しました。ただ、想太さんの裏テーマを聞いた後、改めて歌詞を読んだら思わず食らいまくってしまって」(Lil’ Fang)
FAKYは、まだ自分たちが目指している目標からは程遠い位置にいて、その現実と目標の差に悩んでいるという。
花村の歌詞を読んだ時、そんな自分の気持ちを知られているような気がしたそうだ。
「この曲で、先輩後輩としてっていうよりは、“アーティストとして一緒に頑張ろうぜ”と言っていただいた気がして、それが本当にうれしかったです」(Lil’ Fang)
■より現実味を帯びた、夢を見つけた“その先”の景色
Da-iCEもFAKYも確かな実力を持ちながら、世間から認められるまでに時間を要した。
“開(はだ)かるなら 超えるだけさ”という歌詞はまさに2組の思いが詰まっている。
「抱えている悩みがDa-iCEもFAKYも似ていると思っていて。昔から音楽業界を見ていると、“実力派”という言葉で世に大きく羽ばたいたグループってなかなかいない。そんな中、しっかりと自分たちでその道をこじ開けていかなくてはならない。
その難しさがわかるが故に、FAKYには頑張ってほしいなと思いますし、僕もこのフレーズを書くに至りましたね」(花村)
タイトル“Break it down”の意味とは?
「前作『Break out』はもっといろんなものを飛び越えたいとか、誰かに笑われても自分の夢を言える男になりたいっていう思いを込めて作ったんです。今回の『Break it down』はその先の話。夢は見つかっているけど、夢に向かって何を守って何を壊して、何を手に入れていくかという楽曲にしたくて、このタイトルにしました」(花村)
■あの緊張感が蘇る、一発撮りの「Promise」が公開
7月11日に「Break it down」をリリースし、7月13日にはDa-iCEで出演した『THE FIRST TAKE』初の有観客ライブ『INSIDE THE FIRST TAKE supported by ahamo』でのパフォーマンス曲「Promise」が公開された。
独特の空気感に包まれた場内、あの時ステージ上で花村は何を感じていたのか。
「『CITRUS』で『第63回 輝く!日本レコード大賞』をいただいてからの『INSIDE THE FIRST TAKE supported by ahamo』出演なので、前回の『THE FIRST TAKE』よりも緊張感と背負っているものの重みが違いましたね。
気持ちが強くなりすぎたあまりに全身震えていて、歌い終わったあと(大野)雄大くんとふたりで腰を抜かしたほど。しかも、お客さんがいるのにシーンとしているという、“ライブでもレコーディングでもない”今まで体験したことのない独特の空気。
歌っている時、昔からのファンの子がパッと見えたんですけど、泣いていたんですよ。それだけみんなが気を張り詰めている、他では絶対に味わえない不思議なステージでした」(花村)
リリース情報
2022.07.11 ON SALE
DIGITAL SINGLE「Break it down」
プロフィール
ハナムラソウタ/5人組男性アーティスト・Da-iCE(ダイス)のボーカル兼パフォーマー。2020年にはバンドプロジェクト・Natural Lag(ナチュラルラグ)を始動させ、2021年にはYouTuberヒカルとのユニット・UPSTART(アップスタート)を結成。男性では珍しい4オクターブの高音ボイスを武器に人々を魅了する。また、東宝ミュージカル『RENT』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』では立て続けに主演をつとめ、俳優としても活躍。2022年7月23日からは全4都市7公演をめぐる全国アリーナーツアー『Da-iCE ARENA TOUR 2022 -REVERSi-』を開催する。
Da-iCE OFFICIAL SITE
https://da-ice.jp/
リルファング/Lil’ Fang、Akina、Taki、Hina、Mikakoからなるガールズグループ・FAKY(フェイキー)のリーダーをつとめる。2022年8月28日より、福岡・名古屋・大阪・東京の4都市8公演をめぐる全国ライブハウスツアー『FAKY LIVE TOUR 2022 -ALIVE-』を開催。また、今年10月19日には現体制後初の1stフルアルバムを発売する。
FAKY OFFICIAL SITE
https://faky.jp/