TEXT BY 真貝 聡
PHOTO BY 新保勇樹
次の音楽シーンを担うアーティストが競演する『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』。
会場に足を踏み入れると、好きなアーティストのTシャツを着用し、タオルを持った若者がフロアに集まっている。
第8弾目となる今回、関係者談によれば観客の年齢層がいちばん若いとのことで、これまでとは違う『CLAPPERBOARD』が観られるのだと心躍った。
■麗奈の透き通る歌声に、誰もが心を奪われる
オープニングアクトを飾ったのは、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』が開催したオーディションプログラム『THE FIRST TAKE STAGE』で、約5,000組の中からグランプリに輝いた麗奈。
暗がりのステージの上で、麗奈が静かに手を挙げると背後に月夜のような温かいスポットライトが灯る。最初に歌ったのは『THE FIRST TAKE』でも披露した「僕だけを」。
透き通ったその歌声に会場全体が静まり、人々は熱心にステージを見つめる。その後、カバー曲をということで、Vaundy「踊り子」と忌野清志郎「デイ・ドリーム・ビリーバー」をメドレーで披露。
「最後は7月27日に配信リリースする曲をやります」と慎重にチューニングをし、右手で優しく弦を弾き、新曲「キミをアイス」のAメロを歌い出したところで、麗奈は眉を寄せて演奏を止めた。
「…緊張で歌詞を忘れちゃいました。すみません!」。彼女の初々しい姿を目の当たりに思わず会場から拍手が起きる。
「思い出すまで、自由に喋っといてください」と無茶振りをされて、さらに笑いが起こる場内。思わぬアクシデントで吹っ切れたのか、彼女の歌はその後今日いちばん伸び伸びしていたように思う。
「キミをアイス」は初披露の新曲にもかかわらず、冒頭からその歌詞に耳を傾ける場内が印象的で、その確かな歌声、そしてあどけない人柄に僕らは魅了された。
■時に儚く、時に走り出したくなるようなanewhite
次に登場したのは、2019年6月結成のバンド・anewhite。結成半年後には『COUNTDOWN JAPAN 19/20』に出演し、1st EP『NACHTMUSIK』がタワレコメンに選出されるなど、着実に話題を集めている。
そんな彼らが一発目に演奏したのは、佐藤佑樹(Vo、Gu)がコロナ禍の状況を踏まえて書いたという「怪獣と光線銃」。
自宅待機を余儀なくされ、テレビから流れる悲しいニュースに胸を痛め、誹謗中傷が蔓延るSNSに嫌気がさす毎日の中でふと会えなくなったあの子を想って涙を流す。
演奏の終盤、佐藤が天井を見上げてこう歌う。“カンパネルラ 貴方を思う程 今を必死に息しているのさ”。過去と現在の点と点を結ぶ、まるで心のプラネタリウムを映し出したような美しい演奏であった。
「out of the blue」「ソフト」のアグレッシブな楽曲で会場の温度を上昇させ、最後の「ソワレの街で」では、佐藤がギターをかき鳴らし、力強い声を飛ばす。
日原大吾がベースで高速スラップを魅せて、河田一真(Gu、Key)の勢いのあるギターソロ、鈴木優真(Dr)のテクニカルなドラムで最大の盛り上がりを生んでステージを後にした。
■会場をダンスフロアに変えた、OdAkEiのステージ
YouTubeチャンネル登録者数が130万人を突破した、みきおだチャンネルのおだけいことOdAkEi。
真っ暗なステージにパッと赤いライトがついた瞬間、そこには拡声器を持ったOdAkEiの姿があった。女子高生や女子大生から爆発的な人気を誇るだけあって、序盤から黄色い声が飛び交う。
とはいえ、彼の音楽にアイドル的な要素はない。まずは海外のエレクトロを下敷きにした「AWAKE」「6」をかまし、今日が2回目ライブだと明かした後、「最近、曇りばっかりで嫌だよね。イライラすることも多いしね。そんな時、みんなは何て言う? うぜえよとか? 早く晴れてよとか? いろんな表現があるけど、いちばんカッコ良い言葉がある。それはね…“I Don’t Care”」。
その瞬間、ラッパーのTEMBAがサプライズで登場し、会場全体の熱が帯びる。ふたりのけたたましい歌唱の応酬に魅了されていると、「もうひとり、遊びに来てくれたぜ!」と言って、今度はCarlo Redlがステージへ。
リラックス感のある「WAVES」では、3人の異なる声質が気持ちいいハーモニーを生んだ。何よりお互いに顔を見合わせながら歌うその姿は、ファミリーとしての絆も感じる。最後「SHOCKER」はダンスビートで観客を踊らせ、サビで一体感を作り、渋谷の街にふさわしい先端的なステージを繰り広げた。
■全員を歓喜の渦に巻き込んだTENDOUJI
トリを務めたのはTENDOUJI。中学の同級生と後輩だったアサノケンジ(Vo、Gu)、モリタナオヒコ(Vo、Gu)、ヨシダタカマサ(Ba)、オオイナオユキ(Dr)によって2015年に結成。2019年にはTeenage Fanclubの来日公演のサポートアクトを務め、『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演も果たし、今や東京インディ/オルタナ・シーン屈指の愛されバンドという異名を持つ。
アサノが「最後だから、みんな歌って踊って帰りましょう!」と言って、「COCO」でスタート。中国のオリエンタルリフから始まり、サーフポップ感のあるサウンドに自然と体が動く。
「こういういろんなアーティストが入り混じるライブは珍しくて。みんなの好きなものを増やせるチャンスです。僕らもみんなの“好きなもの”になれるように頑張りたいと思います」。
そう発して「I don’t need another life」「SURFPUNK」「Killing Heads」と曲を重ねるたびに、彼らに触発された観客たちが各々に自由なステップを踏む。
最後にモリタがマイクを握る。「こんな平日に来るような奴らはクソ野郎の集まりです…というか、人間はクソで良いと思っています。みんなクソであり続けてくださいね」。
ロックにおける最大の賛辞を送った後、フィナーレにふさわしい「Young Love」へ。正直、この日来ていた観客のほとんどは、ロックフェスに行くタイプの人たちじゃなかったと思う。でも、彼らのロックは人を選ばないことを証明した。なぜなら、4人がステージを去った後も拍手が鳴り止まなかったのだから…。
ジャンルの垣根を超えて、みんなが一緒になって同じ音楽を体感する。そんな特別な日のことを“CLAPPERBOARD”と呼ぶのだと確信した一夜は、こうして幕を閉じた。
2022.06.22@東京・渋谷CLUB QUATTRO
『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.8』SET LIST
■麗奈
01.僕だけを
02.踊り子(Vaundy Cover)
03.デイ・ドリーム・ビリーバー(忌野清志郎 Cover)
04.キミをアイス
■anewhite
01.怪獣と光線銃
02.out of the blue
03.ソフト
04.バケトナ
05.カヤ
06.ソワレの街で
■OdAkEi
01.AWAKE
02.6
03.I Don’t Care -English Ver.-
04.WAVES
05.SHOCKER
■TENDOUJI
01.COCO
02.Stupid!!
03.HEARTBEAT
04.I don’t need another life
05.SURFPUNK
06.Killing Heads
07.Young Love
ライブ情報
CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.9
08.09(火)東京・渋谷CLUB QUATTRO
出演:クレナズム / ねぐせ。/ ヤングスキニー / yutori
『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』OFFICIAL Twitter
@clapperboard_JP