■「音楽大好きでいてくれて、ありがとう!」(フレデリック・三原健司)
「フレデリックは今年の3月に『フレデリズム3』というアルバムを出しまして。その音楽を、みんなにどの場所で届けようかな? って思ったときに、“めちゃくちゃでっかいアリーナでやろう!”と決めて――その日までしっかり俺たちの音楽を、磨いて磨いて磨き上げて、ここにやって来ることができました」
大観衆に語りかける三原健司(Vo&Gu)の声は、この大会場の舞台に立つ感慨と同時に、客席を埋め尽くしたオーディエンスの“人生最高の日”を音楽の力で更新しようとする意欲に溢れていた。
2022年6月29日、フレデリックは国立代々木競技場第一体育館にてワンマンライブ『FREDERHYTHM ARENA 2022 〜ミュージックジャンキー〜』を開催した。神戸ワールド記念ホール(2018年)/横浜アリーナ(2020年)/日本武道館(2021年)に続く4度目のアリーナ公演にして、自身最大キャパシティの会場でのワンマンライブ。今年3月にリリースした最新アルバム『フレデリズム3』を携えて行われた今回のステージは、音楽と自分たちの存在証明を改めて今この時代に打ち立てるような、圧巻の熱演だった。
WOWOWプラスで生中継も行われていたこの日のアクト。「FREDERHYTHM ARENA、始めます」という宣誓とともに三原健司・三原康司(Ba&Cho)・赤頭隆児(Gu)・高橋武(Dr)の4人が舞台に登場、この日のライブの幕開けを飾ったのは、『フレデリズム3』にも収録されている「名悪役」だった。“思い出にされるくらいなら二度とあなたに歌わないよ”…昨年の日本武道館公演の最後、当時は未発表の新曲としてWアンコールでサプライズ披露された「名悪役」が、『FREDERHYTHM ARENA』のヒストリーを今に繋ぐオープニングナンバーとして力強く響いた。
そのまま「TOMOSHI BEAT」「蜃気楼」と、『フレデリズム3』からひときわダンサブルでエモーショナルな楽曲を繰り出し、代々木体育館を軽快なクラップとステップの渦に巻き込んでいく。
コロナ禍の影響で、なおも歓声や歌声が会場に鳴りわたることはないものの、この瞬間を全力で楽しみ尽くそうとする客席の高揚感が、ステージ上の4人をさらに高ぶらせていった。
「俺たちがやることはシンプルです。俺たちはただ、自分の音楽を信じ続けて、ここまでやって来られました。なので、ちゃんと素直に、純粋に、全力で俺たちの音楽をしっかりやり込みます。なので、あなたもそうであってください。1対1でやりましょう!」
そんな健司のMCに続けて、「VISION」「かなしいうれしい」から「ANSWER」「Wanderlust」へ…と既発曲と新曲群を織り重ねる展開のなかで、よりいっそうハイパーな訴求力を増したバンドアンサンブルを高らかに響かせていった。
そんな熱気と躍動感に満ちたライブの空気感が、「うわさのケムリの女の子」から一変。舞台がスモークで覆われるなか、ディープでミステリアスな歌世界が広がったところで、ファンキーなビートとメランコリックな音の質感が印象的な「ラベンダ」が披露されると、場内にラベンダーの香りが漂う特殊効果によって、オーディエンスの没入感をさらに高めていく。
「今日、6月29日やんか。6(ム)・2(ジ)・9(ク)で、ミュージックの日なんよ。そのミュージックの日に、『ミュージックジャンキー』っていうライブをやることは運命――デスティニーやなって」(赤頭)
「今の時代を生きて、今の時代の音楽を鳴らしてる俺たちにとって、今置かれてる状況と向き合うことは、自分たちをよりオリジナルたらしめるものだと思う」(高橋)
「自分がフレデリックの曲を書いてるんですけど…すごく変なバンドだなって、自分でも思うんです。でも、その個性とか、いびつさだったりとか、そういうものを愛してもらえてるからこそ、今日アリーナでライブをやれるんだなと思ってます」(康司)
それぞれの想いを滲ませた中盤のMCで拍手を誘ったあと、センターステージから康司・赤頭・高橋の3人だけで演奏した「YOU RAY」。康司がボーカルをとり、赤頭のアコギの調べとともに鳴りわたったこの曲が、フレデリックという音楽の奥行きと深みを豊かに物語っていた。
その演奏を聴いていた健司が「すごい3人でしょ? 俺の、自慢の仲間です」と3人を讃えつつ、静かに過去を回想する。高校生ぐらいの頃まで、自分の高い声が嫌いだったこと。そんな自分の声が、歌声になると素敵に思えたこと。そして、康司・赤頭・高橋が必要としてくれたから、「俺はこの声で一生やっていこう」と思えたこと――。そんな言葉に続けて、健司がアコギ弾き語りで歌い上げたのは「サイカ」。センターステージで聴き入る3人と向かい合うように、花道にひとり立って歌う健司。“個性を認め合う”ことの大事さを伝える何よりのメッセージとして、その歌声はどこまでも伸びやかに響いた。
センターステージに戻った4人、「ここから踊らしていくで! 覚悟してや!」(健司)と「Wake Me Up」からクラップとジャンプに沸き返る怒濤の後半戦へ。和田アキ子への提供曲のセルフカバー「YONA YONA DANCE」から「KITAKU BEATS」、さらに「8年前、この曲でメジャーデビューしました! 今でも、色褪せない曲です」と「オドループ」に突入すると、会場のダンスと手拍子の熱量はさらに高まっていく。
「俺さあ、今日、今この瞬間、人生最高の日を更新したいんだよ!」と呼びかけながら、刻一刻と衝動の熱を増していく健司のボーカル。センターステージに躍り出て華麗なギターソロを決める赤頭。タイトなビート感でアンサンブルに痛快な推進力を与える康司&高橋のリズム。4人一丸のアンサンブルが強靭になればなるほど、そのサウンドは眩しいポップ感に溢れていく――というフレデリックのマジックが、この日のライブの隅々にまで漲っていた。
「今がいちばんカッコいいバンドでありたい」と繰り返し語っていた健司の「ミュージックジャンキーのあなたに届けます」のコールとともに、4人は本編ラストナンバー「ジャンキー」へ。警備員に扮していたスタッフがウサギのマスクでダンスを始め、ビジョンに投影される観客が顔認証でウサギにチェンジ、さらにセーラー服&ジャージ姿の双子の姉妹ダンサーも登場。同楽曲のMVの世界観がそのまま現実に飛び出してきたような演出に、会場の祝祭感が天井知らずに高まっていく――そんななか、舞台のビジョンには『FREDERHYTHM TOUR 2022-2023』の文字が! 9月から開催されるライブハウスツアー、さらに来年、2023年3月に行われる東阪ホールツアー『FREDERHYTHM HALL 2023』のスケジュールまで次々に映し出され、客席のクラップはさらに歓喜の色を増す。音楽への純粋な冒険心と探究心が生んだ、最高の風景だった。
一度ステージを下りたあと、割れんばかりの手拍子に導かれて、再び4人がオンステージ。
「2020年からコロナという状況において、ライブっていうものの価値観を考えさせられる時期がありましたよね?」と健司が語る。「そのなかで、オンラインライブの面白さにも気づけたし、まだまだ可能性は尽きないな! って楽しんでたけど…やっぱり、みんなとこうして会って音楽をやることの大切さにも、改めて気づけたんで。それを形にしようっていうことで、30本回らせていただきます! いちばん長いツアーですが、今まででいちばんワクワクするツアーになります。今がいちばん楽しいフレデリックなので、あなたに会いたいと思ってます」
割れんばかりの拍手を受けて、4人はアンコールとして「サーチライトランナー」、さらに「熱帯夜」へ、と『フレデリズム3』の楽曲を立て続けに披露。「熱帯夜」では客席一面のハンドウェーブの景色が広がり、灼熱の一夜の終幕を美しく彩っていた。「音楽大好きでいてくれて、ありがとう!」という健司の渾身の叫びが、遥か「その先」を見据えるフレデリックの晴れやかな闘争心の象徴として胸に響いた。
夏フェス出演などを経て、フレデリックは9月15日から自身最多公演となる全国ツアー『FREDERHYTHM TOUR 2022-2023〜ミュージックジャーニー〜』(LIVE HOUSE編/Zepp編、計28公演)と『FREDERHYTHM HALL 2023』(3月10日:大阪・オリックス劇場、3月29日:東京・NHKホール)の開催が決定している。
TEXT BY 高橋智樹
PHOTO BY 渡邉一生、森好弘、小杉歩
<SET LIST>
1.名悪役
2.TOMOSHI BEAT
3.蜃気楼
4.VISION
5.かなしいうれしい
6.ANSWER
7.Wanderlust
8.うわさのケムリの女の子
9.ラベンダ
10.YOU RAY(三原康司/赤頭隆児/高橋武)
11.サイカ(三原健司ソロ)
12.Wake Me Up
13.YONA YONA DANCE
14.KITAKU BEATS
15.オドループ
16.ジャンキー
En1.サーチライトランナー
En2.熱帯夜
『FREDERHYTHM ARENA 2022〜ミュージックジャンキー〜』プレイリスト
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/Fre_Arena_MJ0629
フレデリック OFFICIAL SITE
http://frederic-official.com/