日向坂46が前作「ってか」以来、約7ヵ月ぶりとなるニューシングル「僕なんか」をリリースした。今年3月30日、31日には、改名前のけやき坂46(ひらがなけやき)時代から目標に掲げていた東京ドームでの公演を実現。二度の延期を経て、“約束の彼の地”である夢のステージにたどり着いた彼女たちにとって、新たなスタートなる7枚目のシングルでは小坂菜緒がセンターに復帰した一方、二期生の渡邉美穂が本作の活動をもっての卒業を発表。現体制の22人では最後となるシングルにどんな思いで挑んだのか。二期生の河田陽菜と三期生の山口陽世のふたりに話を聞いた。
INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 関信行
■みんなと一緒だったからこそ(東京ドームに)立てたなって思う
──おふたりはどんなペアだと言えばいいですか。
河田陽菜(以下、河田):みーぱん(佐々木美玲)ファミリーのメンバーですね。
山口陽世(以下、山口):はい、みーぱんファミリーです!
──お互いはどんな存在ですか。
山口:河田さんはお話がしやすい先輩です。すごく優しくて…なんだろうな…。
河田:もうない?
山口:(笑)いや、ありますよ!私は後輩なんですけど、癒しを放たれてる方だなと思います。
河田:ふふふ。私は人見知りなほうなんですけど、山口はなぜかわからないんですけど、話しやすくて。あんまり後輩という感じがしないし、仲間っていう感じがしますね。たぶん、トーンがずっと一緒だからですね。赤ちゃんみたいでかわいいんですけど、猫をかぶることがあまりないというか。表裏がないし、気を遣わずに喋れるなって思います。
山口:自分でも裏表がない人間だと思っていたので、河田さんからもそう見られてうれしいです。
──そんなおふたりにとって、初の東京ドームでのライブはどんな経験になりましたか。
河田:会場がとても広いので、リハーサルからして、今までよりもすごく大変だったんですね。いろんなことがあったんですけど、わからないことや不安なところがあると、メンバーが疑問点を投げかけて、ちゃんとひとつずつ確認したり、変更したり、直したりすることができて。全員で作り上げたなというのがあったので、すごく達成感がありました。私自身は、自分が東京ドームのステージに立ててることに不思議な感覚もあったんですけど、みんなと一緒だったからこそ立てたなって思うし。すごく楽しかったです。
山口:日向坂がずっと目指してきた、目標にしてきた場所で、ずっと待ってくださっていた“おひさま”(ファンの呼称)の皆さんと一体感が作れて。無事に成功を収められたし、東京ドームを満員にしてライブができたことにすごく感謝の気持ちでいっぱいですね。
──ひとつの夢が叶った後に燃え尽き症候群はなかったですか?
河田:ふふふ。終わったあとは、たしかにほっとはしましたね。ライブ前に不安なことがすごくたくさんあったので、大丈夫かなっていうのがずっとあって。だから、まずは無事に終わって良かったな~って。
山口:私も河田さんと同じですね。それまではずっと東京ドームのことで頭がいっぱいで。いろいろと詰め込んでいたので、2日間のライブが終わって、成功できたっていうことにすごく安心感はありました。でも、東京ドーム公演をする前から、「これがゴールじゃないよ」っていうことは言ってもらえていて。本番のMCでも(佐々木)久美さんが「今日ここがまた新たな出発の場所となりました」とおっしゃっていたので、終わったでのはなく、ここからがスタートだなという気持ちがありました。
河田:私は一週間くらいは余韻に浸ってました(笑)。でも、少しずつ、ここからがまた新たな出発なんだなっていう気持ちになってきたし、あのときは声出しが禁止だったので、いつかまた同じ場所で、今度はコールもできるライブができたらいいなって思ってますね。
──2日目のアンコールでは新曲「僕なんか」をサプライズで初披露しました。
河田:一瞬で終わりました。「僕なんか」を披露するのにいっぱいいっぱいで、お客さんの反応をあまり見れなかったんですけど、心を込めてできたなというのがあります。最後の手振りが早いところがあって。そこを間違えたら目立つので、間違えたらやばいって思いながらやってました。
山口:パフォーマンスしていて、イヤモニからメンバーの声が聞こえてくるんですけど、みんな力強い声で歌ってて。それが自分の心の中にも伝わって。ライブならではのパフォーマンスができたんじゃないかなと思います。
■これまでと違う表現をできるという楽しみもが大きかったです
──最初に受け取ったときはどう感じましたか。
河田:すごくネガティヴな歌詞だなって思いましたね。今まではネガティヴな曲よりも、みんなにハッピーを届けるっていう楽曲が多かったので、3枚目のシングル「こんなに好きになっちゃっていいの?」以来、久しぶりだなというのがあって。でも、これまでと違う表現をできるという楽しみもが大きかったです。“僕なんか…”って、きっと誰もが思う感情だし、自己嫌悪に陥ることはみんなもあると思う。でも、そんなに思い込まなくていいよっていうのを、私たちが伝えていけたらいいなと多います。
山口:ネガティヴな歌詞にはなってるんですけど、おひさま以外の方々が見たときも、日向坂のまた違った一面を見せられる楽曲にしたいし、すごく親近感が湧くようなパフォーマンスができたらなと考えてました。
──この自分に自信がないというネガティヴな主人公には共感しますか?
山口:そうですね。共感しますね。グループ活動をしているので、いろんな人と自分を比べてしまって。あの子はできるのに、なんで自分はこれができないんだろうって感じる瞬間はたくさんあって。“僕なんか…”っていう気持ちはよくわかります。
河田:うん、私も同じです。例えば、振り入れが全然覚えられないなとか。すごく些細なことでも感じることがあるので、わかるなって思いますね。
──自己肯定感が下がってしまったどう対処してますか。
山口:私は嫌だったことをとりあえず忘れるようにしたいので、全く違う、自分が楽しめることをして埋めます。例えば、お友達とお話をしたり、熱中できるものをやったりします。絵を描いたり、ゲームをしたり、自分の好きなアーティストさんを見たりしてます。
河田:私はこれまではそういうとき、ひとりになって、落ちるところまで落ちていたんですけど、最近はそういうときこそメンバーと話すようにしてて。他愛もないことで笑ったりとか、明るい出来事が起きると、意外とすぐに忘れちゃったりする。そうすればいいんだっていうことに気づいてからは、“私なんか…”って落ちることは少なくなりましたね。
──では、歌入れはどんな思いで臨みましたか。
山口:いつもはキーが高い曲が多いんですけど、この曲は頑張れば地声で歌えるような楽曲なので、いつもよりはちょっとだけ力強さを入れた感じでした覚えがあります。
河田:何も考えずに、というよりは、歌詞を考えながら歌ったなっていう記憶があります。
──最終的には自己肯定感を上げてくストーリーになってますよね。
山口:そうですね。落ちるだけじゃダメなので(笑)。“もう二度と言いたくない”と言ってるので、聴いてくださってる方にも前を向いてもらえるようなパフォーマンスを心がけています。
河田:聴いてて、勇気が出たり、私は大丈夫かもって思ってもらえるような、みんなに寄り添える曲になったらいいなと思います。
──MV撮影はどうでしたか?
河田:まず、とにかく、寒かった!私的には今までのMV撮影でいちばん寒かったです。
山口:私もいちばん寒かったです。朝早くて、海沿いだったので、風も冷たくて。寒い時期に撮ったので、みんな、震えながらやってましたね。あと、前半はみんなでダンスを踊るシーンが多いんですね。ひとりではなく、みんなでずっと一緒にいたので、すごく心強かったです。あと、2サビで小坂さんが入ってくるダンスシーンはみんながすごく笑顔で踊っていて。みんなと目が合ったりしたときもうれしかったです。
■(小坂が)帰ってきてくれてありがとうっていう気持ちでいっぱい
──小坂さんが合流するシーンはグッときますよね。メンバーも本当にうれしそうな顔をしてて。
河田:私も本当に“うれしい”しかなかったです。小坂がいると謎の安心感があるんですよ。本当に帰ってきてくれてありがとうっていう気持ちでいっぱいです。帰ってきて、すぐにセンターを務めるのは大変だと思うんですけど、小坂は、やるとなったら切り替えてやってて。偉いな、すごいなと、いつも後ろから見てて思います。
──ラストのサビではメンバー同士がペアになってやるフリもありました。
河田:私は上村ひなのとペアなんですけど、ひなのちゃん気持ちが私にまで伝わってきて。…なんて言うんだろうな。“僕なんか!”って思いながらやってるんだろうなっていう力強さが私にも伝染して。その場面はいつもひなのちゃんの力が伝わってきます。
山口:私は(潮)紗理菜さんと一緒なんですけど、フォーメーションで近くになったのが初めてだったんです、以前からお話をたくさんさせていただいていたんですけど、今回は待ち時間もお話ししてくださって。とても優しい方なので、踊りながら目が合うんですけど、すごくほっとする気持ちになります。
──どんな話をしてましたか?
山口:下手側にいる(濱岸)ひよりさんと(高瀬)愛奈さんも一緒にお話をしてたんですけど、しりとりとかしてました。
河田:あはははは。かわいい。
──(笑)カップリングについても聞かせてください。「飛行機雲ができる理由」は全員参加曲になってます。
河田:なんだか切ない曲なんですよね。
山口:最初は明るい曲だなって思ったんですけど、歌詞を読んだりすると、河田さんが言ってたように、ちょっぴり切ない感じだなと思いました。
──旅立ちを見守ってるような切なさがありますよね。
河田:なんなんでしょうね、この切なさ。でも、MVは楽しい感じなんです。逆にその楽しい感じが相待って、余計に切なくなるんですけど。
山口:最後に全員写真をみんなで撮るところがあるんですけど、楽しい思い出を残してるようなショットになってて。そこでもちょっぴり寂しさを感じました。
■明るく笑顔で終わってる部分に、美穂さんの卒業を感じさせる
──MVは取り壊しが決まった「陽だまり寮」のお別れパーティーが舞台になってます。
河田:渡邉(美穂)がこのシングルが最後なんですけど、「僕なんか」の後に「飛行機雲ができる理由」のMV撮影があって。「僕なんか」の撮影のときは美穂が最後っていうのはあまり考えないでやってて。「飛行機雲ができる理由」のときに、全員でできるMV撮影はこれが最後だなっていうのを思い出して。美穂とも「そうだね」っていう話して、勝手に寂しくなって。美穂から踊り出すシーンがあったり、「陽だまり寮」の名前も、渡邉の写真集のタイトル「陽だまり」を連想させるし、忘れられないMVになったなと思います。
山口:私は美穂さんと一緒の部分は少なかったんですけど、最後にみんなでダンスしてるシーンが印象に残っていて。お別れなんですけど、それを寂しくさせないようにみんなではしゃいで終わってる。お別れを惜しんでるけど、明るく笑顔で終わってる部分に、美穂さんの卒業を感じさせて、悲しいなと思いました。
──渡邉美穂さんの卒業に対してはどんな思いがありますか。
山口:すごく寂しいです。でも、美穂さんがそうやって決めたことなので…。私はまだまだ全然考えられていないので、自分で考えた道に進んでいくというのは、ちゃんと考えないとできないことなので、カッコいいなと思います。
河田:たしかに。私はなんでもできる子だなっていうのをずっと感じてました。でも、陰ではたくさん努力もしていると思うし、すっごく優しくて、みんなに寄り添ってくれる存在で。グループから抜けるのは、すごい覚悟がないとできないなと思うので、そうやって自分の道に進むことを決めたのは、私もカッコいいなと思います。本当にいい子なので、これから先、きっと素敵なことだらけだろうなって感じてます。
■落ちていく節目じゃなくて、いい変化ができる節目にはしたい
──現体制の22人としては最後のシングルになるんですよね。
山口:東京ドーム公演が終わって、22人最後のシングルができて。日向坂としてひとつの節目だなって思いますね。「22人では最後」と聞くと寂しいですけど、まだ全然実感わかなくて。でも、落ちていく節目じゃなくて、いい変化ができる節目にはしたいなと思います。
河田:私も全然実感わかないんですよね。美穂がいなくなったら寂しくなるんだろうなと思うけど、みんなでもっともっといいグループにできるようにしたい。美穂が外から見ても、素敵なグループにいたんだなって思ってもらえるように頑張りたいし、美穂のことも応援していきたいなと思います。
──二期生曲「恋した魚は空を飛ぶ」も収録されてます。
河田:二期生はどちらかというと、今までもかっこいい系の曲が多かったので、美穂が最後の曲もすごいダンス曲で、私的にもとても楽しかったです。美穂のソロダンスのシーンもあって。やっぱカッコいいんですよね。ライブでやるときはテンション上がりそうだなと思いました。でも、そのライブには美穂がいないんだよなっていうことばかりを考えてしまって…。MV撮影の日は、二期生のみんなで普段はしないような話とかもして。美穂のリップシーンが最後だったんですけど、待ち時間が結構あって。そこからの切り替えが過ぎてすごすぎて。その撮影が終わったあと、みんなで美穂に抱きつきに行って。「お疲れ」って言いながら、二期生みんなで抱き合ったのがいい思い出です。
──舌打ちもある曲ですよね。
河田:美穂には似合いますね(笑)。
山口:本当にすごくカッコよくて。記憶に残る楽曲ですし、MVがダンスとリップシーンだけというのもあまり見たことはないですよね。ダンスのリハ、きっと大変だったんだろうなって思うけど、本当に美穂さんに合ってる曲だなと思いました。
河田:今までの曲よりはダンスダンスしてたけど、それが逆に楽しかったです。
──三期生曲「ゴーフルと君」の解説もお願いします。
山口:ゴーフルの説明がサビの頭で出てくるんですけど(笑)、それだけじゃなくて。ゴーフルというお菓子に紐づいて、昔の過去の恋愛を思い出してて。明るいメロディではあるんですけど、すごく切ない歌詞だなって思いました。
──ちなみに、急に食べたくなるものありますか?
河田:ピザ。不意に、「今日、ピザ食べたいな」ってなります。
山口:私はシュークリームかな。
河田:ふふふ。かわいい。
──(笑)じゃあ、思い出と結びついてる食べ物は?
山口:給食ですかね。
河田:懐かしい!
山口:今は給食を食べてないので、高校生のときもふと食べたくなることがありましたし、みんなで給食を食べてたなっていう思い出が甦ったりします。メニュー的には、ご当地のものなんですけど、“スタミナ納豆”が人気だったんですよ。タバスコが入ってて。
河田:なんか、大人だね。
山口:納豆にねぎとタバスコを混ぜたもので、すごく人気だったんです。地元の鳥取を思い出すという意味でも懐かしいなって思います。
河田:私は焼き魚。ピアノ教室に行ってるときに、先生の家の夕ご飯の匂いが焼き魚というイメージがあって。だから、今でも焼き魚の匂いを嗅ぐと、ピアノ教室のことを思い出します。
──ありがとうございます。三期生の曲はどうでしたか?
河田:声がいいなって思います。ひなのちゃんのパートで好きなところがあって。“お腹にたまらない”っていうところが超かわいいのでみんなに絶対に聴いてほしいです。本当にかわいいので。
■陽世がめっちゃヒロインでかわいい
──ピンポンイントのおすすめですね。MV撮影はどうでしたか?
山口:この歌詞とは全然結びつかないようなMVになってて。私が漫画を描いているっていう設定で、男の子に「そんなの誰でも描けるじゃん」って言われて、ちょっと落ち込むんですね。次の日に、他の3人が私が描いた漫画のコスプレをしてきて励ましてくれるっていう、学校生活を描いたものになってて。みんなの素の表情が見られたりするので見どころだなって思います。
河田:陽世がめっちゃヒロインでかわいいんですよ。最初のシーンで制服着てて、それもかわいくて。私、今日、“可愛い”しか言ってないんですけど(笑)。制服が似合うなと思ったし、三期生の良さが詰まっていて。陽世を励ます3人にうるっときましたし、いいMVでした。
■たくさんの雰囲気が集まってできた7枚目
──グループとなる節目となる7枚目のシングルをどう届けたいですか。
河田:22人で出すシングルは最後なので、いろんな日向坂を楽しんでいただければいいなと思います。
山口:今回のシングルは全部が違った雰囲気の曲になってて。「僕なんか」はネガティブな感情ですけど、一期生さんの明るいところ、二期生さんのカッコいいところ、三期生のフレッシュな部分とか。たくさんの雰囲気が集まってできた7枚目なので、その違った雰囲気を楽しんでいただければなと思います。
リリース情報
2022.06.01 ON SALE
SINGLE「僕なんか」
プロフィール
日向坂46
ヒナタザカフォーティーシックス/秋元康が総合プロデュースするアイドルグループ。欅坂46のアンダーグループ、けやき坂46として2015年より活動。2019年3月27日の単独デビューを発表後、グループ名を改名し、日向坂46へ。
日向坂46 OFFICIAL SITE
https://www.hinatazaka46.com/