TEXT BY 真貝聡
■今日ここでMACOと観客が出会うために
5月29日、MACOが同月1日から敢行していた全国ツアーの最終公演『MACO We Promised. ~Acoustic&Pop~ Final』を東京・日経ホールで開催した。なお、今回のツアーは1部にアコースティックアレンジ、2部にポップスアレンジという2部構成で行われた。
開演時間の17時になり、まずステージに現れたのはバンドメンバーのさいとうりょうじ(Gu)、松本将太(Ba)、滝本成吾(Key)、馬場智也(Dr)。各々が楽器を手にして、幻想的な青い照明の下でゆったりと演奏を始めた。しばらくしてMACOが登場。まずは客席に向かって深々とお辞儀をした。そしてマイクを口元に運び、ピアノの美しい音色に歌声を乗せた。“あなたに出会った日 特別な日 忘れない奇跡”。オープニングを飾ったのは、今年4月にリリースしたフルアルバム『We Promised.』に収録されている「Promised.」。MACO曰く、この曲は「魂同士がすでに約束していたから、今出会うことができたんだ」という想いで作ったという。今日ここでMACOと観客が出会うために、このステージで歌うために作った曲、という気概が歌声に宿っていた。
さらに「恋蛍」「運命」とバラードを重ねていき、会場を優美の色に染めると、観客に言葉を投げかけた。「ふふ…今、すごく緊張してる。全国ツアーは約2年ぶりということで、これまで5ヵ所を回らせていただいたんですけど、全部楽しかった。今日もみんなと楽しめたらと思っています」。そして今日は来てくれてありがとう、と何度も感謝の気持ちを伝えたあと、再びマイクを握った。「次の曲は22、3歳のときに書いた曲なんだけど、未だに歌っていて自分が励まされる。こうして出会えたのは、みんなだったから会えたと思ってるし、MACOだったから会えたと思っています」。そう言って披露したのは「存在」。7年前のインタビューで彼女は「この歌詞は、MACOってひとりだなって悩んでいたときに書いた」と話している。
初めて人前で歌ったのは、彼女が中学生の頃。学園祭で出演者はバンドばかりだったにも関わらず、たったひとりでステージに上がり大好きなAIの曲を歌った。その後、高校の学園祭でもひとりでステージに立ち、地元・函館でもたったひとりでライブハウスを中心に活動を行っていた。上京直後は寂しさのあまり、ホームシックになったという。“本当はずっと/心細くて/ひとりよがりだったんだ”。常に孤独と戦っていた彼女は今、バンドメンバーや大勢の観客に囲まれながら、満面の笑みを浮かべて歌っている。これまでの葛藤と試練の日々は、今日のためにあったかのように。
6曲目「春一番」では、観客がひとりまたひとりと自然に立ち上がり、手に持ったペンライトを大きく振った。春風に揺れる稲穂のように、左右に動く黄色いペンライトが綺麗に輝いた。その後、「7月7日の今夜」「アマオト」「再恋愛」と曲を重ねて、計10曲を披露したところで1部が終了。
■グルーヴィなバンドの演奏とMACOの弾ける歌声
10分間の休憩を挟み、2部は「運命共同体」で始まった。1部のしっとりと聴かせるバラードとは対照的に、「lonely」「NATURAL LOVE」と次々にR&B調で横揺れなリズムの楽曲を届ける。さらに「We Gonna Be Happy」で会場の温度は上昇していき、グルーヴィなバンドの演奏とMACOの弾ける歌声に呼応するように、観客のテンションも増していく。「良いですね!ライブって感じがしてきましたね!」とMACOの緊張も完全に解れている様子だ。
気付けばライブは終盤に差し掛かっていた。「こうやって歌を歌って、みんなも応えてくれるのがすごく楽しいなと思いながら、5ヵ所を回ってきました。いろいろあったけど、ツアーのためにエネルギーを満タンにして、それをみんなに知ってもらうつもりで、ここまでやってきました」。そう言って「手紙」「End Love?」とバラードを歌い上げ、2部の締めくくりに選んだ曲は「これは君への最初のラブレター」。「今回のアルバムでいちばん好きな曲です。これが最後の曲なんだけど…あぁ終わりたくない、終わりたくないよ」。MACOは寂しさを堪えながら、気丈に振る舞って歌う。「みんなの笑顔が見れて、みんなの涙が見れて、本当に素敵な一日になりました」。大勢の拍手に包まれながら、袖へとはけるMACOとバンドメンバー。
すぐに会場中からアンコールの手拍子が起きて、再びステージに登場すると「LOVE MYSELF」を披露した。“怒らないで聞いてね/親愛なる自分へ”“好きになれなかったんだよ/昔はこの声も臆病な性格も”。未来の自分へしたためた手紙には、苦しかった過去が映し出されている。2番になり“予想外の展開/地元離れて東京で”“偶然が重なって/ママはいつも泣いていたね/パパは最期逢えずに/今は一番星に”と歌ったところで、MACOは涙で声が出なくなり、咄嗟に後ろを向くと観客の拍手がよりいっそう強くなった。“頑張れ”“大丈夫だよ”の手拍子が、もう一度彼女を振り向かせた。恍惚の表情で歌うその姿は、この日のハイライトだったと思う。
「泣かないって決めていたんだけどな、今日。この曲は自分にとって大事な曲だから歌ったんだけど…やっぱりママとパパの件になるとね。今日は来れてないんだけど、やっぱりうるっときちゃって。今日、お姉ちゃんが来てるから、きっとお姉ちゃんはうるっとしてるんだろうなと思ったら、自分まで泣けてきちゃって…」。ラストはファンのために書いた「愛」を歌い、2時間にわたる涙と笑いに溢れたライブは幕を閉じた。
※写真は5月1日の公演より
『MACO We Promised. ~Acoustic&Pop~ Final』
2022年5月29日@東京・日経ホール
セットリスト
01.Promised.
02.恋蛍
03.運命
04.存在
05.桜の木の下
06.春一番
07.恋人同士
08.7月7日の今夜
09.アマオト
10.再恋愛
11.運命共同体
12.lonely
13.NATURAL LOVE
14.We Gonna Be Happy
15.夏風邪
16.タイムリミット
17.交換日記
18.手紙
19.End Love?
20.これは君への最初のラブレター
EN1.LOVE + LOVE MYSELF
EN2.愛
ライブ情報
『MACO Miss You Summer 2022』
7/31(日)大阪・Billboard Live 大阪 ※1日2回公演
8/13(土)神奈川・Billboard Live 横浜 ※1日2回公演
MACO OFFICIAL SITE
https://maco.futureartist.net