■「ギターとふたりで繊細なグルーヴを再現するのは難しいんですけど、それはそれで深いものがあって、それを今日みんなに楽しんでもらえたらなって」(iri)
2月23日に5作目となるアルバム『neon』をリリースしたシンガーソングライターのiriが、4月27日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにて、初のアコースティックライブ『iri Presents “Acoustic ONEMAN SHOW”』を行った。
このライブは、これまでバンド形態のライブでもたびたび披露し、好評を博してきたアコースティックのパフォーマンスにフォーカスした初のワンマンショーであり、10代より地元のジャズクラブにてギターの弾き語りで歌を紡いできた彼女の音楽家としての原点に立ち返る特別な機会でもある。
ソファやラグ、観葉植物やフロアライトといった家具が配置され、リビングと彼女の部屋をイメージしたセットが組まれたステージに登場したiriはルームウェアに身を包み、いつもよりリラックスモード。そして、その傍らに、彼女が湘南エリアでライブを始めた最初期にステージで共演したというサポートギタリストのカイ・ペティートを従え、初期の代表曲「rhythm」からライブは始まった。
この日は、作品において低音の利いたビートやシンセサイザーを交えたトラックへと構築した楽曲を解体。ギター一本のアレンジに置き換えた演奏は、iriの音楽の核を露わにするとともに、生のままの歌声、その響きに宿る説得力が聴く者の心をぎゅっと鷲掴みにした。
「Corner」や新作『neon』収録の「渦」といったダンストラックは、カイ・ペティートがギターとベースの弦を混ぜて張った変則的なバリトンギターから同時に生み出すギターとベースのサウンドが支え、メロウな「飛行」はジャジーに、さらにヒット曲「Wonderland」は原曲のアコースティックな質感をさらに色濃く演出するなど、前半はiriの歌声が体現する豊潤な音楽性を素晴らしいギターワークが際立たせていた。
MCでは、「アコースティックライブは初めての試みなんですけど、デビュー前はこうやってジャズクラブとかでライブをやっていました。だから、すごく懐かしくてね。いつもは低音が利いたバンド形態だったりするから、ギターとふたりで繊細なグルーヴを再現するのは難しいんですけど、それはそれで深いものがあって、それを今日みんなに楽しんでもらえたらなって」と語ったiri。この日は『neon』のアナログ盤リリース日ということもあり、自室で親しい友人との再会を楽しむように、ステージに用意されたレコードプレイヤーで自身の作品をプレイするなど、終始リラックスムードでライブは進行した。
自身によるソロ弾き語りで披露された中盤は、「フェイバリット女子」をはじめ、2016年のデビューアルバム『Groove it』の楽曲が続いた。10代の反発心から生まれた「無理相反」や夭折した兄に思いを馳せた「brother」など、この時期の楽曲はギターを手に生まれたものが多く、そのオーガニックな響きを活かした「会いたいわ」は2017年の発表から口コミで広がり、時と共に代表曲となった異例の名曲。曲に込められた記憶や感情は歌い演奏する彼女自身をも揺らし、感極まるような瞬間をもたらした。
終盤は再びカイ・ペティートとのデュオ形態に戻り、「Sparkle」「24-25」「Only One」「SUMMER END」といったおなじみのシングルナンバーが続いた。コロナ禍の着席スタイルのアコースティックホールライブということもあり、オーディエンスはじっくり演奏を楽しみつつも、滑らかに歌い、ラップするiri本人をも思わず立ち上がらせてしまうほどにアコースティックなグルーヴは楽しく心地良い。客席からも自然と両手が挙がり、ハンドクラップが生まれた。
そして、歌とギターからなるミニマムな編成が表現する多彩な感情に酔いしれるも、ライブは大詰め。「また泣いちゃいそうな曲だわ」という一言と共に、「SUMMER END」から「はじまりの日」へと続くエモーショナルなメロディと言葉の流れが会場をカタルシスに誘った。
このアコースティックワンマンショーでiriの内面奥深くに分け入ったその先で待っているのは、5月15日にKT Zepp Yokohamaからスタートする全国ツアー『iri S/S Tour 2022 “neon”』。再びバンド編成を従えて、今度は内から外に向かって伸び広がってゆくiriの歌声が味わえるはずだ。
TEXT BY 小野田雄
PHOTO BY 田中聖太郎
■4月27日(水) 東京・LINE CUBE SHIBUYA『iri Presents “Acoustic ONEMAN SHOW”』SET LIST
1.rhythm
2.Corner
3.飛行
4.渦
5.Wonderland
6.フェイバリット女子
7.ナイトグルーヴ
8.会いたいわ
9.無理相反
10.brother
11.Sparkle
12.24-25
13.Only One
14.Wanderling
15.SUMMER END
16.はじまりの日
リリース情報
2022.02.23 ON SALE
ALBUM『neon』
2022.04.27 ON SALE
ALBUM『neon』アナログ盤
SET LIST PLAY LISTはこちら
https://jvcmusic.lnk.to/iri_Acoustic_ONEMAN_SHOW
iri OFFICIAL SITE
http://iriofficial.com/