TEXT BY 森朋之
■“すべての人が自分らしく生きられるように”という願い
ちゃんみなが『THE FIRST TAKE』第210回に登場! 代表曲「美人」を今回だけのスペシャルアレンジで披露した。
Awich、chelmico、あっこゴリラなど魅力的なアーティストが次々と登場し、これまでにない盛り上がりを見せている日本の女性ラッパーシーン。その代表格のひとりともいえるちゃんみなは1998年生まれで、日本語、韓国語、英語を駆使するトリリンガルラッパー。Z世代、ミレニアム世代を象徴するアーティストとして強烈な存在感を放っている。
彼女は2016年に放送された『BAZOOKA!!!高校生RAP選手権』で注目を集め、その翌年、シングル「F××KER」でメジャーデビュー。元カレからの連絡に“もういらないちょっと前まで/ずっと夢中だったのに”とリアクションする「CHOCOLATE」(2017年)、“長かったね愛してたよねもう終わりにしよう”というパンチラインを持つ「Never Grow Up」(2019年)、“愛されたかった”という切実な想いをリアルに描き出した「ハレンチ」(2021年)などが10代、20代の女性を中心に強く支持され、確実に知名度を上げてきた。
海外のグローバルポップともリンクしたサウンド、ラップ/ボーカルの高いスキル、そして何よりも、自らの生き方、価値観、未来へのビジョンを刻み込んだ意志あるリリックによって、新世代アーティストの旗手となり、昨年10月に行われた初の日本武道館公演でも、最初の集大成と呼ぶにふさわしいパフォーマンスを繰り広げた。
今回の『THE FIRST TAKE』で披露された「美人」は、2021年4月にリリースされたEP「美人」のタイトルトラック。中心となるテーマは、外見を重視して人を評価すること、容姿による差別を意味する“ルッキズム”だ。
マイクの前に立った彼女はまず、「美人」を制作した背景を説明した。
「この曲はデビューしてからずっと見た目のことに対する批判で悩んでいた時というか、悩んでいるのがすごいピークだった時に書いた曲です。この曲で、少しでも見た目、コンプレックスを抱えている方だったり、自信が無い方へ届いて、笑えるきっかけになっていただけたら良いなと思ってます」
カメラに向かってそう話したあと、パフォーマンスがスタート。目にグッと力が入り、一瞬にして集中力を高めた彼女は、“美 美 美にしろ注意”というラインを放ち、凄まじいばかりの求心力で観る者を惹きつけていく。
「美人」のリリックは、もちろん、彼女自身の体験に裏付けられている。デビュー直後、当時17歳だった彼女にSNSを介して投げつけられた、ひどい言葉の数々。そのときに受けた傷と向き合いながら、自らの才能を磨き、作品へと結びつけてきた過程──“あの時狂った精神に才能が開花”というフレーズに象徴される──そのものが、この曲には込められているのだと思う。
その根底にあるのは、“すべての人は美しい”という想い。“あなたこそダイヤ美しい”“あの彼女を助けなさい”という歌詞をカメラを見据えて響かせるちゃんみなの姿を観れば、この楽曲に対する彼女の濃密な想いを実感してもらえるはずだ。
ドラム、ギター、ベース、ギター、ホーン隊による、生々しいバンドグルーヴも最高。彼女の言葉、表情、パフォーマンスを増幅させるような演奏にもぜひ注目してほしい。
外見によって人を判断したり、プロトタイプな女性像/男性像に閉じ込めようとする傾向は、今も根強い。“ルッキズム”という言葉に馴染みがない人も多いかもしれないが、「美人」の渾身のパフォーマンスによって、彼女の怒りや憤り、そして、“すべての人が自分らしく生きられるようになってほしい”という願いはさらに広く浸透するはず。
現在の社会の中にある様々な問題、それを敏感に受け取り、誰もが呼応できる楽曲へと昇華する。それはヒップホップという音楽の本質であり、ちゃんみなが多くのリスナーを惹きつけ続けている理由でもあるのだ。
ちゃんみなが放つリアルなメッセージは、『THE FIRST TAKE』への出演によって、さらに多くのリスナーに届くはず。レベルミュージック(反抗の音楽)を体現し、聴く者の思考を揺さぶると同時にポジティブな行動へと誘う彼女の楽曲の存在意義は、ここからさらに強くなっていくだろう。
リリース情報
2022.03.23 ON SALE
Blu-ray&DVD『THE PRINCESS PROJECT』
Blu-ray&DVD『THE PRINCESS PROJECT – FINAL – 』
YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
ちゃんみな OFFICIAL SITE
https://chanmina.com/